2015年9月23日水曜日

鈴虫を飼う


コオロギ科

 仕事の用事で警察署に行ったのは、この夏の8月7日。暑い盛りである。入り口から中に入ると、リ〜ン、リ〜ンと涼しげな音。緊張感がほぐれる。各種書類の発行を待つ人々のいるホールにケージが設置され、中にはおびただしい数のスズムシがいた。

 近くに「スズムシ、さしあげます」の張り紙が。せっかくだからちょっとだけもらおうかな・・と思い、持ち帰るためのビニール袋でもないかと鞄の中を探る。近くの窓口にいた婦警さん風の方にスズムシ希望の旨を伝えると、さっと小さな飼育ケースを出して「100円負担頂きますが、よかったらこのケースをどうぞ」とのこと。

 恐ろしく準備がいい。そして慣れた手つきでマット土をケースに入れて、霧吹きで湿り気を与える。「土は乾燥しないように時々こうして湿らせて下さい」沢山のスズムシのいる中に手を突っ込んで、一匹ずつ捕まえる手つきも素早い。「この産卵管がある方が♀です。両方いないと卵を産まないので。ああこの小さめのは、また脱皮して、もう少し大きくなります」全部で7匹ばかり見繕ってくれた。

 「それから、タンパク質系のえさを与えないと♀が♂を食べてしまいます」と、スズムシ用の餌が市販されていることを教えてくれた。なんか警察署ではなく、ペットショップにいるような錯覚に陥ったが、とても親切で物知りな婦警さんだった。


 ずっと昔、別の街に住んでいた頃にも人からスズムシをもらったことがある。飼育すると安易に増えて、飼いきれなくなるのかもしれない。その時は庭で出入り自由な状態にしておいたら、徐々に姿を消し誰もいなくなった・・。

 野生で生きるということは厳しいことなんだろう。今回は婦警さんに教えてもらったとおりに飼育してみることにした。そして卵が無事孵って、沢山増えたら庭に放してみようと思う。

 しかし7匹いたスズムシはだんだんといなくなって、ただいま♂と♀が一匹ずつ生き残っている。死骸を探すが見つからないのは、やはり共食いをしているのかもしれない。いくらタンパク質を与えても、弱った者がいれば食べて栄養にしているのだろう。まさに弱肉強食の世界。今宵も♂が鳴いている。翅をハート形に膨らませて。前ほど力強くはないが・・。


追記:9月末日頃、♀↑が逝去。その後一匹残された♂も、たぶんすぐに後を追うかと思われた。がその後半月以上生き延びて、本日10月16日についに没する。朝見たら、まだかすかに白い触角を動かしていたんだけど・・・。
♀のとなりに埋めてやる。来春、二世たちが誕生したらどうしよう・・・。